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自恣

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じし/自恣

雨期の三ヶ月間を過ごした安居あんごの最終日(陰暦七月一五日)に、安居を過ごした出家者全員が集まり、規則に抵触した事項を互いに確認し懺悔しあう、終わりの会。三蔵を構成する律蔵は、波羅提木叉はらだいもくしゃ別解脱。個人規則)、経分別波羅提木叉の細則・注釈)、犍度けんど(集団規則)の三部から成るが、自恣(ⓈpravāraṇāⓅpavāraṇā)はこの中の犍度に分類される僧団儀式である。一堂に集うことが儀式の必須条件となる。自恣をもって衆人は身心清浄となり、安居は解散する。原語Ⓢpravāraṇāには「満足」の意味があり、漢訳「自恣」はこの意訳と考えられる。最終日をもって安居期間の禁止条項から解放されるため、各自にとっては「満足いく状態、ほしいまま(恣)」になる。それゆえ、最終日のその儀式が「自恣」と呼ばれる。ちなみに対応するチベット語(Ⓣdgag dbye)は「解禁、解制」の意味。自恣は東アジアの仏教圏では僧供養盂蘭盆会とも結びつき、民間信仰にも影響を与えている。


【参考】石川美恵『二巻本訳語釈—和訳と注解—』(財団法人東洋文庫、一九九三)、佐々木閑『出家とはなにか』(大蔵出版、一九九九)、平川彰『律蔵の研究』(『平川彰著作集』一〇、春秋社、二〇〇〇)


【参照項目】➡安居波羅提木叉犍度


【執筆者:中御門敬教】