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「稲荷」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:19時点における最新版

いなり/稲荷

農耕神で食物を司る神。稲荷社の祭神。祭神は、穀物の神である宇迦之御魂神うかのみたまのかみ(倉稲魂命)、保食神うけもちのかみ御食津神みけつかみとされる。全国にある稲荷神社の総社は、渡来人秦氏と関係が深かった京都市伏見区の伏見稲荷神社である。中世から近世にかけては、五穀豊穣のほか商工業や衣食住に神徳がある神として民衆の間で信仰が広がり、稲荷社・小祠しょうし・邸内社として全国各地に分霊されていった。民間では、狐を稲荷神の神使とする信仰がある。仏教では、平安期に伏見稲荷が教王護国寺(東寺)の鎮守となったことから、稲荷神は荼枳尼天だきにてん(ⓈḌākinī)と習合した。愛知県豊川市の豊川稲荷曹洞宗)、岡山市の妙教寺(最上稲荷)は、稲荷信仰寺院として知られる。浄土宗寺院でも、境内稲荷社を勧請している事例が見られる。


【参考】直江広治『稲荷信仰』(『民衆宗教史叢書』三、雄山閣出版、一九八三)、五来重監修『稲荷信仰の研究』(山陽新聞社、一九八五)、大森恵子『稲荷信仰と宗教民俗』(『日本宗教民俗学叢書』一、岩田書院、一九九四)、伊藤唯眞『仏教民俗の研究』(『伊藤唯眞著作集』三、法蔵館、一九九五)、山折哲雄編『稲荷信仰事典』(『神仏信仰事典シリーズ』三、戎光祥出版、一九九九)


【執筆者:大澤広嗣】