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父子相迎

提供: 新纂浄土宗大辞典

ふしそうごう/父子相迎

善導般舟讃』にある言葉。阿弥陀仏を父に、衆生を子になぞらえ、互いにたずねあって浄土に相まみえる様子をいう。良忠般舟讃私記』には「父子等とは、仏菩薩を父に譬え、新生の者を子に譬え、父来たりて子を迎えるなり」(浄全四・五五五下)と記している。証賢は『三部仮名鈔』の一部として『父子相迎』を撰しており、これを注釈した湛澄の『父子相迎諺註』には「弥陀如来と我等と、仏性おなじくして、一子のごとく憐み給うゆえ、本尊を父といい、衆生を子と名づく」(続浄八・二二一下)と述べている。また、聖聡は『当麻曼陀羅疏』四二(浄全一三・六七一上)において『法華経』の長者窮子ぐうじの譬えとの相似を指摘している。


【執筆者:渋谷康悦】


二巻。証賢撰。著述年代は『真如堂縁起』によると、元亨年間(一三二一—一三二四)と推定される。『三部仮名鈔』七巻の一つで、『帰命本願鈔』三巻、『西要鈔』二巻に続くもの。阿弥陀仏を父に、衆生を子に譬え、父子相迎して極楽浄土往生すべきことを和文で説いた書。前二部は老僧の問答を記録する形式で記されているが、本書は自ら説き示している。多くの比喩を用いるなど巧みな表現で娑婆世界極楽浄土の優劣を説き、厭離穢土欣求浄土の思想が説かれている。流麗な和文により古来、宗内外から注目される著作である。刊本に隆尭開版応永二六年(一四一九)刊、貞享四年(一六八七)刊等がある。末書に湛澄の『三部仮名鈔諺註』一四巻、同『三部仮名鈔要解』七巻、賀茂真淵『三部仮名鈔言釈』七巻がある。


【所収】続浄八、正蔵八三、仏全六二、『国文東方仏教叢書』(第一輯)三


【資料】『父子相迎諺註』(続浄八・仏全六二)、『真如堂縁起』(仏全一一七、『続群書類従』七八四)、『向阿上人伝』下(浄全一七)


【参照項目】➡父子相迎諺註三部仮名鈔帰命本願鈔西要鈔三部仮名鈔諺註


【執筆者:工藤大樹】