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断善根

提供: 新纂浄土宗大辞典

だんぜんごん/断善根

邪見を起こすことにより因果道理を否定し、善根を絶ってしまうこと。もはやいかなる善ももたらさないこと。Ⓢkuśala-mūla-samucchedaの訳語。『婆沙論』『俱舎論』では、無間地獄に堕ちるとされる悪業である。無間業と対比して定義している。プールナなどの六師外道提婆達多のように悪事をなして地獄に落ちた者には、もはや善根はない、これに対し阿闍世は無間業はなしていないから、断善根とはいわないという。有部(『婆沙論』『俱舎論』『順正理論』)では断善根の本質を「非得」(心不相応行法の一つ、心と相い伴わない法)とし、善根がなければいかなる善法も存在しないとみる。一方、経部、世親瑜伽行派では断善根であろうと、善法が種子として保存されるという立場をとる。


【資料】『釈浄土群疑論探要記』


【参考】吉元信行「邪見と断善根」(日仏年報四八、一九八三)、宮下晴輝「善の断絶と続起」(『仏教学セミナー』八六、二〇〇七)


【執筆者:西村実則】