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形而上学

提供: 新纂浄土宗大辞典

けいじじょうがく/形而上学

あらゆる存在者をして存在者たらしめる原理、および人間の感覚や知覚では捉えられない超越的存在の探究をいう。ギリシャ語ta meta ta physikaないしラテン語metaphysicaは、元々アリストテレスの著作を編集する際、自然学(ta physikaあるいはphysica)の後に来るものを指したが、metaが「後」と「超えた」の両義を持つ故に、後に自然現象を超えた存在を扱う学問を意味するようになった。中世では自存する存在そのものという神概念に基づいて、近世では反省的主観性の自己確実性に基づいて形而上学が構築されたが、近代に入り、カントはこれらを超越論的仮象に基づく迷妄として批判した。ドイツ観念論において形而上学思惟は絶対者の概念の内に甦るが、以後現代にかけては、実証主義やニーチェの思想などにより様々な視点から批判がなされ、ハイデガーの考えでは形而上学の歴史の解体が主題とされるに至る。仏教では釈尊の「無記」に見られるように、基本的に形而上学的議論は斥けられるが、「無記」が記述不可能性を意味するならば、必ずしもその限りではなく、さらに後の大乗への展開の中に形而上学的傾向が認められるとする見解もある。


【参照項目】➡無記


【執筆者:司馬春英】