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帰命本願鈔

提供: 新纂浄土宗大辞典

きみょうほんがんしょう/帰命本願鈔

三巻。『西要鈔』二巻、『父子相迎ふしそうごう』二巻と合わせて『三部仮名鈔』と総称。向阿証賢述。『真如堂縁起』中では元亨の頃(一三二一—一三二四)の著述とする。法然の没後、その門流が異説を立てて正統性を争う風潮を嘆いた向阿は、相伝の正否を明らかにし、法門の是非を正すことを思い立って真如堂参籠、夢中に聞いた修行僧と老僧の問答に託して、末世の衆生は偏に阿弥陀仏本願帰依し、称名念仏によって浄土往生を願うべきことを説き明かす。上巻では第十八願の総論と「十方衆生」について往生の機類を説き、中巻では「至心信楽欲生我国」について安心、「乃至十念」について起行を説き、下巻では「若不生者不取正覚」について説き、浄土宗相伝の源を尋ねて、「としても、かくしても、たゞ身をまかせてたのめ、本願たすけ給ふべし」(続浄八・一一〇上)と「帰命本願鈔」と名付けた由縁を記す。叙述の体裁は歴史物語や中世の説話集・評論集にしばしば用いられる問答形式の手法を用い、明快・流麗な和文をもって綴られている。本書は広く流布し、賀茂真淵(一六九七—一七六九)もその擬古文体を高く評価した。向阿自筆本は清浄華院に所蔵(宗宝)。版本には隆尭開板の応永二六年(一四一九)『三部仮名鈔』、慶安二年(一六四九)版などがあり、註釈書には湛澄帰命本願鈔諺註』六巻、関通帰命本願鈔諺註加俚語』七巻、法岸帰命本願鈔講説』七巻、賀茂真淵『帰命本願鈔言釈』三巻などがある。


【所収】続浄八、正蔵八三


【資料】『真如堂縁起』(仏全一一七)、『雲介子関通全集』二(関通上人全集刊行会、一九三四)、『大日比三師講説集』上(大日比三師講説集発行所、一九一〇)、『賀茂真淵全集』一二(続群書類従完成会、一九八七)


【参照項目】➡向阿三部仮名鈔


【執筆者:山本博子】