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布薩戒

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ふさつかい/布薩戒

戒体阿弥陀仏戒相名号、戒用を如実修行、またその結果としての浄土往生を期する戒法で、室町時代から江戸時代にかけて浄土宗に伝承したもの。つぶさには浄土布薩頓教一乗円実大戒という。これは本来の布薩とは異なる意味において「布薩戒」という伝法として構築されたもので、浅学相承から碩学相承を経て璽書相伝の時点でこの布薩戒相伝された。つまり近世にあって布薩戒とは浄土宗の最深秘奥の伝法であった。布薩戒の淵源は明らかではないが、法然作と伝える『浄土布薩式』を根拠としたものであり、釈尊から菩提流支曇鸞道綽善導法然へと次第し、法然から聖光へと相伝された戒であるとしている。この戒の特徴は念仏と戒の一体化であり、一白三羯磨いちびゃくさんかつまにおいて受者が「南無阿弥陀仏」と三唱することである。近世初期の潮吞の時点では伝目が整備されていなかったが、各檀林伝法の整備化が進むにつれて布薩戒伝目も整備されていき、近世中期には道誉流・感誉流・幡随意流などがそれぞれに伝目を整え、さらに個々の伝書が独自の伝目と添口伝を記載している。このことから布薩戒が近世中期から後期にかけて隆盛を極めたことが分かり、事実、一時は円頓戒を廃するほどまでになっていた。しかし近世後期には円頓戒復興が始まり、輪超岸了了吟らが布薩戒を主張する一方で、敬首きょうじゅ大玄らが円頓戒を主張し、この布薩戒相伝と内容の究明をめぐって近世の伝法研究に大きな拍車がかかったとも見ることができる。やがて布薩戒そのものが疑問視されるようになり、大玄らの布薩妄伝説を受けた福田行誡が最晩年の明治二一年(一八八八)に『伝語』で布薩戒の撤廃を主張し、同四五年にはついに布薩戒が全廃されることとなった。このように特に近世の浄土宗においては甚奥なる伝法であった布薩戒であるが、撤廃以後はその実態と詳細な内容について論及されることがなく、現在では布薩戒がどのような形式のもとに相伝されていたか、あるいは布薩戒撤廃後の諸問題などについて詳しいことが分かっていない。


【参照項目】➡布薩浄土布薩式伝語


【執筆者:金子寛哉】