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始段唄

提供: 新纂浄土宗大辞典

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しだんばい/始段唄

四箇法要の始めに仏徳を讃える声明如来唄ともいう。『勝鬘経』の「如来色身 世」(正蔵一二・二一七上)の偈文に曲を付したもので、序曲(無拍子)の典型的な曲である。四箇法要の曲の一つで、一番最初に唱えられる。天台宗などでは顕教の曲とされ、密教では云何唄うんがばいが用いられる。浄土宗では呂曲と律曲の二種が伝えられたが、現在は呂曲のみが伝承されている。年中行事などでは現在は唱えられることはなく、特別な時にのみ唱えられる曲である。この曲を唱える者を唄師ばいしといい、唱えることを唄を引くともいう。相伝をうけた者のみが唱える秘曲とされている。『浄土宗声明集』には、相伝曲とされているので掲載されていないが、『法要集』下に記載されている。


【資料】『声明』(増上寺門前・松村十兵衛、天和三年〔一六八三〕)


【参照項目】➡梵唄


【執筆者:大澤亮我】


四箇法要の最初に唱える曲。「ン如来にょらいめう」。呂曲・双調出音徴しゅっとんち。『法要集』下の「声明」中に「始段唄」呂曲(三〇七)の声明譜があり、同書末には「権大僧都恵隆誌之花押」(三一六)がある。恵隆という声明師がどの系譜の人かは不明である。唄は四箇法要の中で最も重要な地位を占めるものであり、唄伝をうけて正式な唄師となるといわれる。増上寺では、津田徳翁が唱えた唄を五線音符に収めた『縁山声明集』があり、唯一の拠所となっている。出音は盤渉ばんしきで唱えている。大正一三年(一九二四)九月刊の『礼讃声明音譜』では、双調出音徴としている。徴音は壱越いちこつであるから、『縁山声明集』より三律高く唱えていたことになる。本文の「ン如来妙」までは両者の音程に差があるが、「妙」の和由・大由からは、どちらも黄鐘おうしきを主音として旋律を作っている。出音での三律の差はまったく見られない。終止形はどちらも平調で休止している。唱師が独唱し、奥伝中の奥伝の曲である。この曲の特色は、大波・小波のユリである。特に「妙」の音から派生した。小波は「エイエイオ」などと唱える荘重な声明である。


【執筆者:福西賢兆】