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四十八願

提供: 新纂浄土宗大辞典

しじゅうはちがん/四十八願

阿弥陀仏本願別願阿弥陀仏が、因位であった法蔵菩薩としての修行中に、世自在王仏により二百一十億の諸仏国土を見せられ、その中からとくに勝れたものを選び取って建てた四八の誓願のこと。「六八ろくはち弘誓ぐぜい」ともいう。

[異訳諸本の願数]

本願の数は『無量寿経』では四八であるが、〈無量寿経〉諸本においては必ずしも同一ではない。『大阿弥陀経』『平等覚経』では二十四願、『無量寿如来会』では四十八願、『無量寿荘厳経』では三十六願、梵文では四十七願、蔵訳では四十九願となっている。

[各願の名称]

四十八願それぞれに名称を付けて解釈することは、新羅の法位が最初であり、義寂憬興きょうごうや日本では智光良源静照真源澄憲などによって行われている。これらは道光無量寿経鈔』の四十八願釈において紹介されている。道光も独自に名称を付しており、浄土宗ではそれによっている。以下の通り。 ①三悪趣むさんなくしゅ不更悪趣ふきょうあくしゅ悉皆金色しっかいこんじき無有好醜むうこうしゅう宿命智通しゅくみょうちつう天眼智通てんげんちつう天耳智通てんにちつう他心智通たしんちつう神境智通じんきょうちつう速得漏尽そくとくろじん正定聚じゅうしょうじょうじゅ光明無量こうみょうむりょう寿命無量じゅみょうむりょう声聞無数しょうもんむしゅ眷属長寿けんぞくちょうじゅ無諸不善むしょふぜん諸仏称揚しょぶつしょうよう念仏往生ねんぶつおうじょう来迎引接らいこういんじょう係念定生けねんじょうしょう三十二相さんじゅうにそう必至補処ひっしふしょ供養諸仏くようしょぶつ供具如意くぐにょい一切智せついっさいち那羅延身ならえんじん所須厳浄しょしゅごんじょう道場けんどうじょうじゅ弁才とくべんざいち智弁無窮ちべんむぐう国土清浄こくどしょうじょう国土厳飾こくどごんじき触光柔軟そっこうにゅうなん聞名得忍もんみょうとくにん女人往生にょにんおうじょう常修梵行じょうしゅうぼんぎょう人天致敬にんでんちきょう衣服随念えぶくずいねん受楽無染じゅらくむぜん見諸仏土けんしょぶつど諸根具足しょこんぐそく住定供仏じゅうじょうくぶつ生尊貴家しょうそんきけ具足徳本ぐそくとくほん住定見仏じゅうじょうけんぶつ随意聞法ずいいもんぼう不退転とくふたいてん三法忍とくさんぼうにん

[各願の分類]

四十八願を分類することは、浄影寺慧遠無量寿経義疏』上に「中において合して四十八願有り。義要には三、文別に七有り。義要には三とは、一には法身しょうほっしんがん、二には摂浄土願しょうじょうどがん、三には摂衆生願せつしゅじょうがんなり」(浄全五・二七上)とするのが最初である。慧遠は第十二・第十三・第十七の三願を摂法身願、第三十一・第三十二の二願を摂浄土願、他の四三願摂衆生願とする三種に分類した。吉蔵憬興も同じく三種に分類するが、吉蔵は願浄土として三願、願得眷属として四二願、願得法身として三願と分類している。憬興慧遠の説を受けているが、それぞれ求仏身願・求仏土願・利衆生願としている。慧遠はさらに、四十八願が説かれる順序と、この三分類を組み合わせて、以下のように七段に分類している(『無量寿経義疏』上、浄全五・二七)。(丸数字は願数を示す。以下同)

(1) ①~⑪ 衆生
(2) ⑫~⑬ 法身
(3) ⑭~⑯ 衆生
(4) 法身
(5) ⑱~㉚ 衆生
(6) ㉛~㉜ 浄土
(7) ㉝~㊽ 衆生

憬興も同様の分類を行っている。聖冏は『釈浄土二蔵義』二二において、これを「対文次第の七重」としている。聖冏はさらに「義類不次第の七重」をあげ、とくに摂衆生願の四三願摂凡夫願摂聖人願に大別し、摂凡夫願をさらに摂自国願と摂他国願の二つに分ける。また摂聖人願を摂声聞願と摂菩薩願に分け、摂菩薩願をさらに摂自国願と摂他国願に分類している(図)。

四十八願の分類]
(一)摂法身 ─⑫、⑬、⑰
(二)摂浄土願 ─㉛、㉜
(三)摂衆生願 摂凡夫願 ┬摂自国願 ─①~⑪、⑮、⑯、㉑、㉗、㊳、㊴
└摂他国願 ─⑱~⑳、㉝~㉟、㊲
摂聖人願 ┬摂声聞 ─⑭
└摂菩薩 ┬摂自国願─㉓~㉖、㉘~㉚、㊵、㊻
└摂他国願─㉒、㊱、㊶~㊺、㊼、㊽

善導法然四十八願解釈

善導は『般舟讃』において「四十八願ここに因って発す。一一の誓願衆生のためなり」(浄全四・五三〇下)と言って、誓願はすべて衆生のために発されたものであるとしている。法然は『選択集』六において『法事讃』上の「弘誓多門にして四十八なり。偏に念仏を標して最も親しとす」(浄全四・八下)を引いて、「故に知んぬ。四十八願の中に、すでに念仏往生の願を以て、本願の中の王と為す」(聖典三・一三五)と第十八願が四十八願の中心であるとした。


【参考】坪井俊映『浄土三部経概説 新訂版』(法蔵館、一九九六)、藤田宏達『原始浄土思想の研究』(岩波書店、一九七〇)、同『浄土三部経の研究』(同、二〇〇七)、同「無量寿経—阿弥陀仏と浄土—」(『浄土仏教の思想』一、講談社、一九九四)、香川孝雄『浄土教の成立史的研究』(山喜房仏書林、一九九七)、恵谷隆戒『浄土教の新研究』(同、一九七六)


【執筆者:曽和義宏】