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博士

提供: 新纂浄土宗大辞典

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はかせ/博士

声明を唱えるときに使用する譜。文字の周辺に記される楽譜の一種。声明譜の記号で、墨譜ぼくふともいう。声明を伝授する師(声明博士・博識聖職者)が旋律・リズムなどを両手・体を使って表現し、図示・記録したであろうことから、声明を導くものとして用いられたと考えられるが、その語源は不明である。古い時代から独特の記譜法によってその旋律が記録されてきた。大別すると古博士こはかせ五音博士ごいんばかせ目安博士めやすばかせがあり、流派によっても多少の差がある。古博士は、その名の示すように、もっとも古い時代の譜であり、その声明譜の出発点と漢字のアクセント・四声点とが一致しており、博士は四声点から発生したといわれるが、時代と共に声明譜は四声点からはなれた。目安博士大原声明の祖、良忍が創始者といわれ、四声点にとらわれない新しい譜本である。目安は目に見える上下の線で旋律の高低・特徴が表されている譜であり、旋律の軌跡を可視的に線によって描くものである。天台宗祖山声明では音高(ピッチ)と旋律の型を象徴的に記号化したものを併用した目安博士を用いている。五音博士金剛三昧院覚意が造り、旋律線の音高を正確に示そうという、純粋に音楽的な欲求に基づいて造られた譜であり、直線の角度で音高を示すことを主目的としたものである。五音きゅうしょうかく)を明らかにするよう標記されていて、真言宗などで用いられている。また浄土宗では、「香偈」などをはじめ「六時礼讃」にも用いている。それぞれ一長一短があり、五線譜と目安博士を参考にした回旋譜かいせんふ五音を表す五本の線上に線描で表記する譜面で、祖山声明では、博士回旋譜を『浄土宗声明集』(知恩院、二〇一〇)の表と裏に記している。また縁山声明師の津田徳翁が実唱した声明が五線譜で記録されている(増上寺式師会、一九八九)。


【参考】片岡義道『叡声論攷仏教学・音楽学論文集』(国書刊行会、一九八一)


【参照項目】➡回旋譜


【執筆者:渡辺俊雄】