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十二門戒儀

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じゅうにもんかいぎ/十二門戒儀

一巻。荊渓湛然けいけいたんねん述。正しくは『授菩薩戒儀』といい、一二門に分類しているところから『十二門戒儀』と呼ばれ、一般の「戒儀」と区別される。また湛然妙楽大師の号をもつことから『妙楽十二門戒儀』ともいう。天台における菩薩戒を授ける作法やその次第順序を記したもの。智顗の『菩薩戒義疏』上に、授菩薩戒義を記したものに梵網本、地持本、高昌本、瓔珞本、新撰本、制旨本の六種がある(正蔵四〇・五六八上)といい、一々その文を参照して十二門としたことを明かしている。この中『新撰本』について『菩薩戒義疏』には「是れ近代諸師の集むる所にして凡そ十八科あり」(正蔵四〇・五六九上)とし、一八項目を挙げている。円頓戒戒儀としてはこの後、陳の南岳慧思に『授菩薩戒儀』があるといわれるが、諸資料によると慧思作とするには疑問点があるとされる。湛然はこれらの諸本を参照しながら『梵網経』『瓔珞経』『菩薩地持経』や先徳の戒儀を参照して自らの十二門の戒儀を定めたものと考えられる。唐の慧沼『勧発菩提心集』下によると『大唐三蔵法師伝西域正法蔵受菩薩戒法』を挙げ、新羅義寂の『梵網菩薩戒本疏』上には、『瑜伽師地論菩薩地』の説によって、「請師、求力、乞戒、長養浄心、問義、正受、啓白請証、礼退」の八門を立て、宋代の遵式じゅんしきは『授菩薩戒儀式』(『金園集』上所収)を作って「開導信心」等の十科を立て、知礼は『授菩薩戒儀』(『四明尊者教行録』一所収)を著して「求師授法」等の十二科を立て、元照がんじょうは『授大乗菩薩戒儀』(『芝苑遺編』中所収)を著して「求師授法」等の十科を示している。ついで日本では最澄の『授菩薩戒儀』、安然の『戒儀』、『黒谷古本戒儀』、『黒谷新本戒儀』、『金剛宝戒章』の『戒儀』などがある。これらの戒儀はいずれも湛然の『十二門戒儀』をいくぶんか改変したもので、内容はいずれも①開導三帰請師しょうし懺悔発心問遮もんしゃ授戒証明しょうみょう現相説相広願勧持の順序になっている。最澄の『授菩薩戒儀』はこれを改変したものである。慧亮『机受戒略戒儀』は、『十二門戒儀』を簡略にしたもので、聖冏の『顕浄土伝戒論』によれば、慧亮が円仁より授かった戒儀であるとし、三帰戒三聚浄戒十重禁戒を授けるだけの簡略なものである。『黒谷古本戒儀授菩薩戒儀則)』と『黒谷新本戒儀』とは、法然黒谷または嵯峨二尊院で製作したものと伝えており、『十二門戒儀』の前後に儀式作法が詳述してあり、内容がきわめて煩雑である。


【所収】浄全一五、仏全四一


【参照項目】➡授菩薩戒儀


【執筆者:金子寛哉】