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五戒

提供: 新纂浄土宗大辞典

ごかい/五戒

不殺生、不偸盗、不邪婬、不妄語、不飲酒ふおんじゅの五つの戒。優婆塞うばそく優婆夷うばいつまり在家信者が守るべき基本的な戒とされる。Ⓢpañca śīlāniⓅpañca sīlāniなどの訳語で、五学処Ⓢpañca śikṣāpadāniⓅpañca sīkkhāpadāni、優婆塞律義などとも呼ばれる。在家信者になるためには三帰を誓い、この五戒を受ける必要がある。五戒の内容は①不殺生(生き物を殺さない)、②不偸盗(盗みを働かない)、③不邪婬(邪な性行為をしない)、④不妄語(噓をつかない)、⑤不飲酒(お酒を飲まない)というものである。五戒は古代インド文化におおよそ共通するものと考えられ、ジャイナ教では仏教五戒に似た五誓を説き、これは前四戒は同一で五つ目を無所有とするものである。五戒五大施として説く『大智度論』一三に「一切の宝の中にて人命は第一なり。人は命の為の故に財を求む、財の為の故に命を求めずと。是を以ての故に仏は説きたまわく、十不善道の中に殺罪は最も初に有り、五戒の中にも亦最も初めに在り」(正蔵二五・一五五中)とあるように、仏教五戒は生命互尊の精神を基盤としている。善導観経疏散善義にも「一切の生命しょうみょうに、慈心を起すは、すなわちこれ一切衆生寿命安楽を施すなり。またこれ最上勝妙の戒なり」(聖典二・三〇〇/浄全二・六一上)とある。浄土宗では道光無量寿経鈔』以降、『無量寿経』下の「五善」は「五悪」を翻す五戒として解釈された。『観経』では中品上生の者を「五戒を受持し八戒斎を持し諸戒を修行して五逆を造らず、もろもろの過患かげんなからん。この善根をもって回向して西方極楽世界に生ぜんと願求す」(聖典一・三〇八/浄全一・四八)と説いている。


【資料】大野法道『大乗戒経の研究』(理想社、一九五四)、恵谷隆戒『改訂円頓戒概論』(大東出版社、一九七八)


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【執筆者:田中芳道】