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提供: 新纂浄土宗大辞典

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ま/魔

生命を奪い、人の善行を妨げる悪魔。ⓈⓅmāraの音写語である魔羅まらの略語。悪魔、殺者せっしゃ奪命だつみょう障礙しょうげなどと訳す。Ⓢmāraは、元来「殺す者」を意味し、修行中の釈尊を誘惑する存在として現れるのが最古の用例である(『スッタニパータ』〔『経集』〕四二五~四四九、南伝二四・一五四~一六一)。ここでは、魔はⓅnamuci(ナムチ)とも言われる。また、ⓈpāpīyasⓅpāpimant(波旬はじゅんと音写、「悪しき者」の意味)と共に用いられることも多い(『雑阿含経』三九、正蔵二・二八四中~九〇中)。このテーマはやがて『普曜経』六(正蔵三・五一九上~二一下)などでの、釈尊降魔成道ごうまじょうどう(魔の誘惑を克服してさとりを完成させた事績)説話として発展した。これらの説話では、魔は魔軍を引き連れて釈尊に戦いを挑んだり、三人や四人の魔女に誘惑させたりした。この魔による攻撃や誘惑は、釈尊煩悩との葛藤を表現したものと考えられている。また、魔は修行成道時だけではなく釈尊の終生にわたって付きまとい、仏弟子達をも誘惑した(『長阿含経』二、正蔵一・一五中~六中)。『瑜伽論』二九(正蔵三〇・四四七下~八中)では、蘊魔うんま(身体が心を乱すこと)・煩悩ぼんのうま死魔しま天魔てんま(他化自在天の魔王)の四魔しまが説かれ、五魔、八魔、十魔などと分類しても説かれる。


【参考】石上善應「相応部有偈篇に現れた仏伝について」(『三康文化研究所年報』三、一九七〇)、中村元『ゴータマ・ブッダⅠ』(『中村元選集〔決定版〕』一一、春秋社、一九九二)


【参照項目】➡降魔念仏除魔魔縁


【執筆者:榎本正明】