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無量寿経鈔

提供: 新纂浄土宗大辞典

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むりょうじゅきょうしょう/無量寿経鈔

七巻。道光述。『無量寿経』の注釈書。本書は、道光が、師良忠に『無量寿経』の注釈書がないため、師から聞いた講説をもとに注釈書を書くよう同門の慈心良空から懇請され、永仁三年(一二九五)春に草案を書き、同門の然空礼阿と再三精論し、同四年正月に草稿本を完成させ、同五年二月に同門の者と治定したもの。内容は、全体を大意・題名・経文解釈三門に分け、大部分を占める経文解釈序分正宗分流通分に三分し、さらに正宗分浄影寺慧遠無量寿経義疏』によって所行(法蔵菩薩修行)・所成(阿弥陀仏身土)・所摂(阿弥陀仏の外用)の三つの大科に、また『観経疏』によって勝因(四十八願は皆勝れた因から起こされている)・勝行(勝因によって勝れた行を起こす)・勝果(勝行によって勝れた果を感じる)・勝報(勝果によって勝れた報を成就する)・極楽(勝報によって極楽を願い感じる)・悲化(極楽を願い感じることによって救いをあらわす)・智慧(悲化によって智慧の門を開く)の七つの小科に分けて注釈している。また、良忠の説にもとづいて、『無量寿経』の異訳や『往生論』と対校させ、広く他の諸経論および浄影寺慧遠吉蔵義寂憬興きょうごう法位玄一等の無量寿経釈から引証し、詳細な注釈を施している。さらに、良忠から相伝された義を記述したものとしているが、浄影寺慧遠くみして、法蔵菩薩が地前十回向の位にある時と地上初位(歓喜地)の位にある時の二度にわたって発心したとする法蔵菩薩二重発心説を説いており、然空の『大経聞書』(実際は門弟の撰)においては「然るに道抄に浄影義を以て本義と存せり、これ尚相承の暗き故か」(続浄四・六七上)と異端扱いしていることは注目される。しかし、後世聖冏聖聡義山観徹等は本書を重視している。『蓮門類聚経籍録』上によれば、注釈書として、良栄理本無量寿経鈔見聞』、知足『無量寿経鈔名義弁事並引拠』、龍原寺霊哲『無量寿経鈔引文私考』がある。


【所収】浄全一四


【執筆者:曽田俊弘】