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三慧

提供: 新纂浄土宗大辞典

さんえ/三慧

聞慧(学習によって得られる慧)、思慧思惟によって得られる慧)、修慧修習によって得られる慧)の三つを指す。三慧とは聞思修慧(Ⓢśruta-cintā-bhāvanā-mayī prajñā)の略称。修道論の立場から説かれたもの。慧の原語はⓈprajñā。小乗大乗ともに「諸法の分析(択法)」が基本的意味。『唯識三十頌註』『大乗阿毘達磨集論』等の唯識瑜伽行派系の論書では、そこに「疑を断つ、決定を得る」が付加される。『俱舎論』では心所の大地法、『大乗阿毘達磨集論』では心所の別境に分類される。『俱舎論賢聖品には「〔戒という〕実践に居る者が、聞と思とを具え、修習を行ずる。聞所成等の慧は名と〔名・義〕両方と義とを境とする」(櫻部・小谷訳)とある。大乗ではその対象が異なり、例えば『現観荘厳論釈』では三慧によって、「空性、無生、所依事なく根本を離れていること」が分析し知られるとある。


【参考】本庄良文「『俱舎論』七十五法定義集」(『三康文化研究所年報』二六・二七、一九九五)、櫻部建・小谷信千代『俱舎論の原典解明—賢聖品—』(法蔵館、一九九九)、ガムポパ著/ツルティム・ケサン、藤仲孝司訳『解脱の宝飾』(UNIO、二〇〇七)


【執筆者:中御門敬教】