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鹿島信仰

提供: 新纂浄土宗大辞典

かしましんこう/鹿島信仰

茨城県鹿嶋市の鹿島神宮に対する信仰。祭神は武甕槌大神たけみかずちのおおかみ。『日本書紀』によれば、武甕槌大神は経津主神ふつぬしのかみと共に、天照大神の命により出雲国に降りて、大国主神と交渉を行い国譲りを実現させたとされる。そのため経津主神を祭神とする香取神宮と共に、東国の開拓と安定のため、古来崇敬を集めてきた。神武天皇の東征に際しては、武甕槌大神が天皇に霊剣を授けて、大和入国を援けたとされる。大和朝廷の東国経営の拠点となり、平城京遷都後には春日社の第一殿に鹿島の神が祀られた。源頼朝の崇敬を受けて以来、徳川歴代将軍に至るまで武家の尊崇を集めた。また鹿島信仰には、水や境の神としての信仰も含まれている。民間では、村落への疫神侵入を防ぐためわらで作られた鹿島人形を置いたり、鹿島人形を船に乗せて流す鹿島流しなどの習俗が東日本の一部で見られる。これは鹿島神宮での新嘗にいなめの神事に際して、各家で作っていた藁人形に由来すると考えられる。このほか海から弥勒みろくを迎える鹿島踊りも各地で見られる。


【参考】岡泰雄編『鹿島神宮誌』(鹿島神宮奉賛会、一九三三)、宮井義雄『歴史の中の鹿島と香取』(春秋社、一九八九)、東実『鹿島神宮 改訂新版』(学生社、二〇〇〇)


【参照項目】➡香取信仰


【執筆者:大澤広嗣】