操作

顚倒

提供: 新纂浄土宗大辞典

てんどう/顚倒

正しい真理に対して、さかさまで誤った、あるいは迷った見方、在り方のこと。主な原語にⓈviparyāsaⓅvipallāsaⓈviparyayaⓈviparītaなどがある。顚倒にはいくつかの分類がある。①二顚倒—『首楞厳経』七(正蔵一九・一三八中)などによれば、衆生迷妄めいもうに惑わされていることから衆生顚倒、この世界も迷妄の世界であることから世界顚倒をいう。②三顚倒—『解脱道論』一二(正蔵三二・四六〇下)などによれば、誤った想念である想顚倒、誤った心の在り方である心顚倒、誤った見解である見顚倒をいう。③四顚倒—『俱舎論』一九(正蔵二九・一〇〇中~下)などによれば、無常なるものを常住であると執着する常顚倒、苦を楽と執着する楽顚倒、不浄なものを浄らかと執着する浄顚倒無我なるものを我ありと執着する我顚倒をいう。『南本涅槃経』二(正蔵一二・六一七上~下)などによれば、この四顚倒とは逆に涅槃の境地について、常を無常、楽を苦、浄を不浄、我を無我顚倒する四顚倒も説明される。三顚倒と四顚倒を合わせて七顚倒とする説明もあり(『瑜伽論』八、正蔵三〇・三一四中)、また、四顚倒にそれぞれ三顚倒があることから十二顚倒とする説明もある(『解脱道論』一二、正蔵三二・四六〇下)。


【執筆者:榎本正明】