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選択集私聚鈔

提供: 新纂浄土宗大辞典

せんちゃくしゅうしじゅうしょう/選択集私聚鈔

一〇巻。智円撰。暦応三年(一三四〇)四月二日に筆録開始(巻一袖書)、奥書に書写の記録がある貞和二年(一三四六)以前に成立。本書には、『選択集』の成立や序文に関する伝承、漸空と顕意けんにの仙洞三心義問答一向宗円智(『和語灯録』開板者)の動向など、注目すべき記事が多く、一念義多念義東山義など、すでに途絶えた流派の逸文も豊富である。智円は「平等金剛律師智円房永覚」と名乗り(『観経疏愚要鈔奥書)、浄音了音—義勝—智円と相承する西山流西谷義六角系の人師。武蔵国大串談義所(埼玉県比企郡吉見町)で盛んに講席を張り、本書以外にも五部九巻の注釈書三四巻を残している。その学風は堅実で、諸流の教義を引用比較しつつ、西山西谷の相伝を主張することを特徴とする。


【参考】望月信亨「律師智円の五部九巻及び選択集私聚抄」(『浄土教の研究』日本図書センター、一九七七)


【執筆者:稲田廣演】