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選択集伝授の御影

提供: 新纂浄土宗大辞典

せんちゃくしゅうでんじゅのみえい/選択集伝授の御影

元久二年(一二〇五)、親鸞が『選択集』の書写を許可された際、法然より賜ったとされる御影。それを示す一文が『教行信証』の跋文ばつぶん中に見られる。また、その様子が『古徳伝』六に、顔を左方向に向けて坐し念珠を繰る通有の法然像をあらわした軸が掛けられた庵室で、法然が自身の肖像画に賛文を書し、親鸞に授与するという場面に描かれている。愛知県岡崎市妙源寺に、この御影の原本と伝える絹本著色源空上人選択付属御影選択集相伝御影)が伝来している。これは、画面中央に畳上に坐す法然が描かれ、その上に賛として六字名号と『往生礼讃』中の「若我成仏十方衆生称我名号下至十声若不生者不取正覚彼仏今現在世成仏当知本誓重願不虚衆生称念必得往生」(浄全四・三七六上正蔵四七・四四七下)の文言が記されるといったもので、真宗における法然上人御影の代表的形式となっている。また、浄土宗では、知恩院大本山善導寺に妙源寺本と同様の御影が残されており、善導寺本には端裏に「元久二年三月十三日」の墨書が、知恩院本には永享八年(一四三六)の裏書にかつて善導寺本と同じ年紀があった旨の記載がそれぞれ認められる。


【参考】中井真孝『拾遺古徳伝絵(常福寺本) 法然上人絵伝集成3』(思文閣出版、二〇〇九)、新編岡崎市史編集委員会編『新編岡崎市史 美術工芸』(新編岡崎市史編さん委員会、一九八四)、津田徹英『日本の美術四八八 中世真宗の美術』(至文堂、二〇〇七)


【参照項目】➡法然上人御影


【執筆者:藤田直信】