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提供: 新纂浄土宗大辞典

ろん/論

著作された論書、教義綱要書、学術書のこと。Ⓢśāstraの訳が相当。古代インドではバラモン教の補助学として様々な分野の論(Ⓢśāstra)が発展した。代表的なものに、『律法論』『実利論』『性愛論』などがある。仏教では部派仏教の論書(『発智論』『婆沙論』など)や、大乗仏教の論書(『中論』『大智度論』など)がこれに当たる。


【執筆者:榎本正明】


仏教三蔵経蔵・律蔵・論蔵)の一つである論蔵の略称。ⓈabhidharmaⓅabhidhammaⓉchos mngon paの訳。阿毘達磨・阿毘曇と音写し、対法・勝法などとも訳す。論蔵はⓈabhidharma-piṭakaの訳。この論(Ⓢabhidharma)は、Ⓢdharmaが「釈尊の教え」、接頭辞Ⓢabhi-が「~に対する、~に関する」を意味することから、釈尊の教えに対する解釈・研究・解説などという仏教研究を内容とする文献で、すでにその端緒は釈尊在世中から仏弟子達によって始められていた。部派仏教の時代になると、それぞれの部派が独自の「仏教研究」を進め、「釈尊の教え=経蔵」・「教団の規則=律蔵」とは別に「仏教研究=論蔵」を形成した。やがて、接頭辞Ⓢabhi-が「勝れた」という意味を持つことから、三蔵の中でも勝れた教えであるとして「増上法」とも解釈された(『婆沙論』一、正蔵二七・一下~二上)。


【執筆者:榎本正明】


十二分教の一つである論議の略称。Ⓢupadeśaの訳。優婆提舎・優波替舎・憂波提舎・烏波第鑠などと音写され、法義・説義・論議経・註解章句経などとも訳される。仏典(経・律・論の三蔵)を叙述形式や内容で一二に分類したものの一つで、釈尊の教えを釈尊自身や仏弟子達が問答や論議においてその意味を明らかにしたもの、経典の解釈、注釈などのことである。『婆沙論』一二六では「種種の異れる文句の義を以て、仏の説を解釈するが如きものなり」(正蔵二七・六六〇中)と説明される。また、『瑜伽論』二五(正蔵三〇・四一九上)では、一切の経典の注釈的研究を行う阿毘達磨も論議であるとされる。世親せしんの大乗経典に対する注釈書には表題にⓈupadeśaの音写語である憂波提舎を付与したものもある。『法華経』の注釈書表題は『妙法蓮華経憂波提舎』であり、『転法輪経』の注釈書表題は『転法輪経憂波提舎』である。法然が『選択集』一(聖典三・一〇〇/昭法全三一二)で正に往生浄土を明かす教えとした「三経一論(『無量寿経』・『観経』・『阿弥陀経』・世親の『往生論』)」の『往生論』は『無量寿経』に対する注釈書であり、その表題を『無量寿経優婆提舎願生偈』と称する。


【参照項目】➡十二分教優婆提舎


【執筆者:榎本正明】