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観音経

提供: 新纂浄土宗大辞典

かんのんぎょう/観音経

鳩摩羅什訳『法華経』「観世音菩薩普門品第二十五」ⓈSamantamukha-parivarto nāmāvalokiteśvara-vikurvaṇa-nirdeśaḥのこと。『観音経』として知られる。観世音菩薩観音菩薩)の慈悲と大神通力による衆生救済を説く経典。長行じょうごう(散文)と偈頌(詩)からなり、偈頌は「世尊妙相具」から始まることから「世尊偈」とも呼ばれる。仏陀無尽菩薩の対話の形をとり、前半は、称名功徳が説かれ、観音菩薩名号を受持・読誦することで、すい羅刹らせつ刀杖とうじょう・鬼・枷鎖かさ怨賊おんぞく難の七難、貪・瞋・痴の三毒を離れ、理想的な息子・娘を授かることができるとする。後半では、観音菩薩神通力が賞賛され、礼拝供養功徳と、三十三身による衆生救済布施の意義が説かれる。散文の後に、ほぼ同じ内容の偈頌が説かれるが、ここでは称名でなく、「念」が強調される。梵本には漢訳に無い偈が七偈付加され、阿弥陀仏成仏に関する記述がみられ、浄土教信仰との関係が指摘される。注釈書としては智顗の『観音義疏』二巻、『観音玄義』二巻がある。


【参考】吉澤秀知『全注・全訳観音経事典』(鈴木出版、二〇〇八)


【執筆者:吉澤秀知】