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胡跪礼

提供: 新纂浄土宗大辞典

こきらい/胡跪礼

中品礼の一つ。右膝を地に着け左膝を立てることを胡跪というが、これに合掌を伴った礼拝のこと。弟子たちが仏等に対し要請や悔過けか懺悔)等を行う場合に用いられる礼法をいい、特に授戒に関するときに多く見受けられる。道宣の『釈門帰敬儀』下に「胡跪というは胡人の敬相なり。この方はその本縁を存じなきところなり。故に胡というなり。或いは胡跽と作るは、諸字を撿じて跽と書く、即ち天竺国の屈膝の相なり」(正蔵四五・八六四上)とあるように、胡人の礼法とされ、ひざまずくことは天竺の屈膝の姿であるとする。また道世の『法苑珠林』では「即ちすべからく知るべし。右膝胡跪の相は経中に多く胡跪を明かす。胡跪長跽、それ天竺の敬儀に並ぶ。怪しむべからず。即ちこれ左右両膝交互に地跪ずく。啓するところありて悔過を請うる儀なり」(正蔵五三・四三四下)と述べ、胡跪をする時間が長く続く場合には左右の膝を交互に跪くこともあることから、この場合は互跪ともいわれ、悔過などの儀式に用いられるインドの敬法とする。浄土宗では『蓮門小子訓』に「胡跪と云うは、屈膝の通名にして別儀なきなり」(仏全七五・二五八上)とするが、胡跪の姿勢を保ち合掌する形を胡跪礼といい、両膝を着く長跪からの礼とは異なるものとする。現在では一般法要には用いておらず、京都法然院などで行われる広布薩会で「香水偈」や「香湯偈」を唱えるときなどに用いている。


【資料】『布薩法則』(文化一三年〔一八一六〕)


【参照項目】➡胡跪互跪


【執筆者:大澤亮我】