祖師一口法語
提供: 新纂浄土宗大辞典
そしひとくちほうご/祖師一口法語
一巻。編者不明。成立年時不詳。西本願寺に天文七年(一五三八)に寄進されたとの記載のある写本が現存するため、成立はそれ以前であろう。法然はじめ聖光、隆寛などの門弟や、良忠や敬蓮社など聖光の門弟とされる人師、さらに源信や永観など平安期の人師などの短編の法語が一三二にわたって収められている。掲載されている人師は法然、聖光、明禅、禅勝房、隆寛、明遍、敬蓮社、乗願、顕性房、敬仏房、良忠、敬日、貞慶、信空、源信、行仙、安然、永観、信証房、宝憧院本願、一向、中蓮房、重源、清水観音の総勢二四人である。本書は近い時期に成立したとされる『一言芳談』の類書に位置付けられており、六三法語が『一言芳談』のものとほぼ一致するなど、関係の深さが指摘されている。編者については冒頭に法然の法語、続いて聖光の法語が並べられているため、鎮西派系統の人師の編集ではないかとする説がある。内容は出離解脱とは、往生浄土とはいかなるものか、そしてそのための念仏行はいかにあるべきかという視点からの法語が多い。また、平成一〇年(一九九八)に本書の異本と考えられる『祖師一言芳談』が発見され、報告されている。
【所収】『浄土仏教古典叢書』
【参考】『浄土仏教古典叢書』解説、落合博志「『一言芳談』〝異本〟考—臼杵市立臼杵図書館蔵『祖師一言芳談』の紹介と研究—」(国文学研究資料館文献資料部『調査研究報告』一九、一九九八)、八田裕子「『一言芳談』諸本対校表」(『文芸論叢』五四、二〇〇〇)
【執筆者:郡嶋昭示】