操作

琳阿

提供: 新纂浄土宗大辞典

りんな/琳阿

生没年不明。鎌倉末から南北朝の頃(一四世紀)に活躍した僧。法然親鸞の両伝記の所持者として知られる。東京芝妙定院蔵『法然上人絵伝』(九巻本の江戸中期転写本)は内題・奥書がなく、その巻第二・三・四・八・九の巻初と巻第二の巻末に「向福寺琳阿弥陀仏」、巻第七の巻初に「向福寺琳阿」の書き入れがあることから『琳阿本』と呼ばれている。序文は『弘願本』の影響をうけ、弟子として聖光を強調、本願寺覚如が制作した『古徳伝』に影響を与えた。親鸞絵伝の一本である西本願寺蔵『善信聖人絵』の巻頭・巻末にみえる詞書と別筆の「向福寺琳阿弥陀仏」との書き入れより、琳阿が両伝記の所持者であることが明らかとなるが、向福寺の寺史は不明。永和三年(一三七七)四条金蓮寺(四条道場)四世浄阿が熱田神宮に奉納した『日本書紀』紙背にみえる和歌の作者の一人に琳阿がいる。同人であるなら時宗との関係も注目される。『弘願本』は「釈弘願」の書き入れからの名称であり、弘願親鸞伝を所持しており、親鸞門流における法然伝の展開が注目される。


【参考】今堀太逸『神祇信仰の展開と仏教』(吉川弘文館、一九九〇)


【執筆者:今堀太逸】