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法服法

提供: 新纂浄土宗大辞典

ほうぶくほう/法服法

袈裟法衣など、僧侶が着用する衣服を法服といい、その種類や使用法を定めたものを法服法という。宗規第二九号「法式に関する規程」第九条には「本宗の法要式典は『浄土宗法要集』に定めるところによらなければならない」と規定され、『法要集』「威儀の部」の中に、法服法が指示されている。浄土宗として、法服に関する正式な決まりができたのは、「宗規法服条例」が制定された大正二年(一九一三)のことである。この条例により僧侶の法服を、通常被着する通常服と、法要式典に被着する荘厳服に分け、荘厳服は一級服から十級服までの一〇種に分類し、袈裟法衣には第一礼装・第二礼装・正装の別を定めた。級別は僧階と寺格によって決められ、法衣の色はもちろん、袈裟は金襴の可否や修多羅しゅたらの色、袴は製式や地色などが詳細に定められた。この「法服条例」は昭和一六年(一九四一)に廃止されたが、新しく制定された「浄土宗宗制」第七章第七節の「座次及法服」第三八八条以下には、ほぼ同内容の条文が規定されていた。しかし、浄土宗合同後の同三八年に制定された「僧侶分限規程」では、通常服荘厳服の別、僧階に相当する法衣の色のみが規定され、袈裟・袴の色や地質などの区別はすべて廃止され、現在に至っている。一方『法要集』に規定する「法服法」を見ると、『法要集』(大正一三年版)では、内容が法要差定礼讃(一部)が主であり、法式作法などについては下巻の巻末に「威儀並に犍稚かんち心得」が示されただけで、如法衣着脱法以外の法服に関する記載はなく、いわゆる法服法は未だ定められるには至っていなかった。この当時のことは跋文ばつぶんに「法式全般に対しては、未解決の問題が山積して、調整統一の道は遠い」と記されていることから、法服を含めた、威儀犍稚などの問題は、未解決のままであったことが窺える。昭和一四年(一九三九)、浄土宗法式協会の調査研究を経て『法要集』(昭和一四年版)が発行され、威儀・法服・執持・犍稚などが項目別に定められて、法服法の基本が制定され、さらに同五八年には、文章・体裁を一新した『新訂法要集』により、時代に応じた改正が行われている。しかし『法要集』(昭和一四年版)開版当時に、法服の着用法を規定していた「法服条例」がすでに廃止され、現行の「宗規」や『法要集』には、法服類の種類以外に詳細な規定や説明がないため、近年ではさまざまな形状の袈裟法衣が作られ、さらに従来は当然とされていた心得も、伝える先徳が少なくなるなど、法服使用に混乱を生じているのが実状である。


【執筆者:熊井康雄】