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方丈記

提供: 新纂浄土宗大辞典

ほうじょうき/方丈記

一巻。鴨長明著。建暦二年(一二一二)三月三〇日成立。随筆。慶滋保胤よししげのやすたねの『池亭記』を模したもの。『徒然草』と共に中世随筆文学の双璧とされる。序の部分に「そのあるじすみかと、無常を争ふさま、いはばあさがほの露に異ならず」とあるように、「人と栖」の無常を主題として進んでゆく。都を襲った大火・辻風・福原遷都・大飢饉・大地震の五大災厄を述べ、三〇歳頃より五〇歳までの自己の運のなさを覚り、出家したことを記す。五四歳より日野山の奥に一丈四方の草庵を設け、内部の様子、外部の模様を描写し、俗界から離れた閑居の気味を強調する。最後には閑居に愛着している自分に、仏教者として反省し、「貧賤の報のみづからなやますか」「不請阿弥陀仏、両三遍申してやみぬ」と結び、鴨長明ではなく「桑門の蓮胤」と署名していることは重要である。思想性の深い自照文学として認められている。


【資料】『方丈記』(新潮日本古典集成『方丈記 発心集』新潮社、一九七六)


【執筆者:榊泰純】