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排仏論

提供: 新纂浄土宗大辞典

はいぶつろん/排仏論

仏教を排撃する論。近世における儒教国学からなされた仏教排撃の思想全般を指す。仏教批判は古代からみられるが、近世においては仏教以外の思想が盛んになったため、排仏論は一定の影響力を持つに至った。近世前半には、儒学者の山崎闇斎、中江藤樹、伊藤仁斎らが、儒教の五倫五常の日常倫理に反する思想として、出家解脱を目指す仏教の超俗性を激しく批判した。後半には幕藩体制の窮乏を反映して、経世論家である中井竹山らや水戸学派の会沢正志斎らが、寺院僧侶を浪費とする排仏論を説いた。大坂懐徳堂の儒者である山片蟠桃らは西欧地球説から須弥山論を批判し、富永仲基は大乗仏教釈迦以後に発展した説であるとして否定した。近世後半には、国学からの批判も盛んになり、本居宣長や平田篤胤らは、仏教伝来以前の日本を理想として仏教を排撃した。近世の排仏論は明治の廃仏毀釈へとつながり、神仏分離令による国家神道設立に影響を与えた。


【参照項目】➡廃仏毀釈


【執筆者:西村玲】