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安楽死

提供: 新纂浄土宗大辞典

あんらくし/安楽死

疾病の末期あるいは重傷により回復が見込めない状態で、かつ耐え難い苦痛にある患者を、その苦痛から解放する目的で、医師などが積極的あるいは消極的手段によって死に至らしめること。また、その行為によってもたらされる死。消極的安楽死は延命治療を控えて死を早める行為であり、尊厳死と同様の意味合いがある。これに対して積極的安楽死は、本人の自発的意志を前提として一定の条件を満たした場合、医師が薬物を投与するなどの積極的方法で死期を早めることである。一般的に安楽死といえば後者を意味することが多い。安楽死法が整備されているのはスイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクならびに米国のオレゴン州、ワシントン州である。日本では積極的安楽死は法的に認められておらず、刑法上殺人罪等の対象となるが、現状は過去の判例が規範化されており、名古屋高等裁判所が昭和三七年(一九六二)に行った判決に示される安楽死法性阻却事由が援用されることが多い。これによれば、安楽死が認められる要件は、①不治の病に冒され死期が目前に迫っていること、②苦痛が見るに忍びない程度に甚だしいこと、③専ら死苦の緩和の目的でなされること、④病者の意識がなお明瞭であって意思を表明できる場合には、本人の真摯な嘱託または承諾のあること、⑤原則として医師の手によるべきだが医師により得ないと首肯するに足る特別の事情の認められること、⑥方法が倫理的にも妥当なものであること、の六点である。また、医師による積極的安楽死に関しては、平成七年(一九九五)横浜地方裁判所の判決の中で、終末期医療においては、③⑥は特に要件とはしないとされている。


【参照項目】➡尊厳死


【執筆者:今岡達雄】