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大師信仰

提供: 新纂浄土宗大辞典

だいししんこう/大師信仰

真言宗の開祖弘法大師空海に対する民間信仰のこと。「大師」はもともと仏の尊称であり、日本では朝廷から高僧に賜る諡号しごうである。空海は承和二年(八三五)六二歳で高野山において示寂、延喜二一年(九二一)弘法大師諡号を賜った。空海高野山の石室中(奥の院)に「入定留身にゅうじょうるしん」していると信じられた。納骨霊場としての高野浄土信仰は、高野聖勧進活動により宗派を超えて納骨が行われ、近世には日本総菩提所的存在となった感がある。空海自身、土木事業や民衆教育活動など多彩な社会活動に尽力したこともあり、大師信仰は庶民生活と密着して展開している。水に困っている村に杖を立ててそこから清水を湧き出させた話(弘法清水・杖立伝説)、旧暦一一月二三日の夜に訪れた大師を小豆粥や団子を作って接待する大師講、また厄除けの本尊としてまつる信仰等がある。弘法大師修行の跡八十八箇所を白装束姿で御詠歌を唱えつつ巡る四国遍路は、江戸時代に盛んになり、大師は今も巡礼者と共に巡歴しているとする。


【参考】五来重『増補高野聖』(角川書店、一九七五)、日野西真定編『弘法大師信仰』(雄山閣、一九八八)


【参照項目】➡空海高野山高野聖


【執筆者:今堀太逸】