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南伝仏教

提供: 新纂浄土宗大辞典

なんでんぶっきょう/南伝仏教

インドからセイロンに伝わり、その後東南アジアを中心に展開した上座部系の仏教のこと。南方仏教上座部仏教、テーラワーダ仏教と同意に用いられている語。また小乗仏教と蔑称で呼ばれる場合もある。南伝仏教の聖典はパーリ語で編纂されており、また戒律を厳守する出家主義の仏教である。南伝仏教という呼称はインド本土から南に伝わった仏教を意味し、また中国や日本などからみて南方に流布している仏教であるから南方仏教ともいう。このような呼称は地理的分類に基づいた便宜的なものであり、歴史的に南伝の仏教がすべて部派仏教だったわけではなく、大乗仏教が流布していた時期もある。南伝仏教の起源は、アショーカ王の子(一説には弟)マヒンダが前三世紀頃にセイロンに伝えた仏教である。この仏教上座部系統の仏教であり、後にセイロンから東南アジア諸国へと広まり発展する。セイロンでは大乗仏教も一定の期間信仰され、それを示す遺物も発見されているが、どれほどの勢力であったかは不明。

セイロンの仏教教団は一二世紀後半に統一され、大乗仏教もこの頃に滅亡したと考えられている。東南アジア諸国に、セイロンから仏教が伝わったとされる時代は、ミャンマーが一〇世紀頃、タイやカンボジアが一三世紀頃である。これらの地域の仏教受容は、各国それぞれに伝説があり、セイロンから仏教が伝来する以前にも仏教教団が存在したと考えられているが、歴史資料が乏しくその全貌は詳らかではない。また南伝仏教が流布した国の多くは、ヨーロッパの植民地とされ、キリスト教の拡大に圧迫されながらも、それに対抗する形で仏教信仰を強め保持した。このような南伝の仏教は、それぞれの地域の風土や文化と融合し民衆の信仰を集め、また様々な学派が存在する。しかし、これらの学派は互いに排他的な存在ではなく、たとえばある国の仏教教団が衰退すると、他国の協力のもとに復興する場合がある。このように南伝仏教が流布している諸国のサンガは、国を超えた協力関係を持つ場合があり、相互扶助的な関係にあるといえる。近年では、このような仏教世界各国に広まり、さらなる展開を見せている。


【参考】池田正隆『ビルマ仏教—その歴史と儀礼・信仰』(法蔵館、一九九五)


【参照項目】➡上座部小乗仏教北伝仏教


【執筆者:石田一裕】