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児童教化

提供: 新纂浄土宗大辞典

じどうきょうか/児童教化

仏教的訓育をもって、児童の宗教的情操の涵養をはかる布教のこと。主に仏教寺院や教会において行われ、内容は創作童話やパネルシアターの実演、日曜学校、子ども会活動など多岐にわたる。仏教では七歳以上の男女に、沙弥・沙弥尼として出家を認めた。そのため、日本の仏教における児童教化は、古来、寺院における僧尼の師弟教育の一環として行われてきた。近世に入り、ようやく僧尼となる児童以外の子女も含めた教育が寺子屋において行われるようになる。明治五年(一八七二)にキリスト教が民間育児施設を開設したことに触発されて、仏教界も同九年に育児院創設を計画するなど、孤児問題の対策を講じるにいたる。そして、大正期から昭和期にかけて、児童教化は全国の仏教寺院において推進される。戦中戦後も、童話を中心に紙芝居、幻灯、大形紙芝居、腹話術、ペープサート(紙人形劇)などを用いた児童教化が盛んに行われた。現在の児童教化は、その当時に理論化され、展開されたものを基礎としながら、パネルシアターなど新しく開発された教材なども柔軟に取り入れて行われるようになったものである。浄土宗における児童教化は、阿弥陀仏の大いなる慈悲のもと、「明るく、正しく、仲よく」健康な心を育むという、人間形成の一助となることを目指すものである。具体的には、念仏を称えて仏の光明裏に明るく毎日を過ごし、仏との約束を守る「仏の子」へと育てていくものである。浄土宗における児童教化の先駆的な活動としては、江戸期に現在の山口県長門市の大日比西円寺において、法洲ほうじゅう日曜学校の原形ともいえる「大日比西円寺小児念仏会」という子どもの念仏講をつくったことが挙げられる(『略伝集浄全一八・五五五上)。また、明治初頭、福田行誡福田会育児院の創設に尽力する一方で、同一三年頃に少年講を設立していることが知られる。


【参考】神根悊生『日曜学校組織及実際』(興教書院、一九三〇)、斎藤昭俊『近代仏教教育史』(国書刊行会、一九七五)、原典仏教福祉編集委員会編『原典仏教福祉』(北辰堂、一九九五)、吉水岳彦「浄土宗における児童教化の一考察」(『仏教福祉』一〇、二〇〇七)


【参照項目】➡パネルシアター日曜学校


【執筆者:吉水裕光】