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元三大師

提供: 新纂浄土宗大辞典

がんざんだいし/元三大師

平安中期の天台宗の僧、延暦寺一八代座主良源の別称。永観三年(九八五)正月三日入寂であることからいう。良源は近江の生まれで比叡山で天台教学を学び、応和の宗論(九六三)で南都法相宗と論争、東大寺の法蔵を屈服させた。翌年内供奉十禅師となり、康保三年(九六六)天台座主に任ぜられた。延暦寺の堂舎を造営、法会を整備、「良源二十六箇条起請」を制して教団改革を行った。正式な大師号は贈られなかったが、慈恵じえ大師、元三大師の名で親しまれている。鎌倉時代には大師の木像を多数作って寺に納めたり、一万体の像を版木って戸口に貼り魔除けとするなどの風習も生まれている(『元亨釈書』)。徳川家康の信頼を得た天海良源信仰した。近世、大師が夜叉の姿となり災害・疫病を除くと誓ったとする信仰より、角を生やした鬼の姿の護符角大師つのだいし」を門口に貼る風習が流行した。


【参考】叡山学院編『元三慈恵大師の研究』(同朋舎、一九七四)、平林盛得『良源』(吉川弘文館、一九七六)、伊藤唯眞編『仏教年中行事』(『仏教民俗学大系』六、名著出版、一九八六)


【参照項目】➡良源


【執筆者:今堀太逸】